~十和田市の大切な文化財を市民の手で守り、未来に遺そう!~
十和田市指定有形文化財第8号新渡戸家文書等新渡戸記念館収蔵資料の保存環境整備保持と活用の活動について
十和田市立新渡戸記念館の建物の耐震診断の一環で行われたコンクリート強度検査で推定強度が「極低強度」と診断されたため、十和田市は4 月1 日より記念館を休館としました。館内に所蔵される市指定有形文化財(昭和56 年指定第8 号)の新渡戸家文書など収蔵資料については、十和田市は昭和40 年に「永久に保存する」として新渡戸家から寄託を受けて新渡戸記念館を建設し、50 年間保存活用を行ってきました。しかし、今後は個人所有のままで公費を使って保存するなどの処置はできないとし、資料保存のための移転先も示していません。更に建物は危険であるとして7 月に廃館し、できるだけ早く壊したいとの意向も示しており、7 月以降は電気、水道など、資料保存に必要なインフラについても予算計上がなく、全て止まる見通しです。新渡戸家には適切な保存場所は現在無く、このままでは、地域にとってはもちろん、世界にとっても大切な資料が散逸し、失われてしまう危機にあります。
文化財は所有者にとっての宝であるだけでなく「人類共通の遺産」であり、所有権の如何に関わらず適切に保存がなされ、次世代に大切な遺産として手渡されていくべきものです。また、全国の例を見ても、所有者と資料の所在地域が文化財の真の価値を理解し、共通の財産として共に手を携えて守り活用し、所有者の家系に伝来する重要な付帯情報と資料自体も分断されることなく保存活用されることが理想だと思います。
そこで現状を鑑み、新渡戸記念館ボランティアKyosokyodo(共創郷土)は、新渡戸家と十和田市との協議が今後正常に行われるためにも、十和田市のルーツである三本木原開拓の歴史と先人たちの開拓精神、武士道精神を伝える地域の文化財を、地域住民自らの手で守り伝える活動を、有志を募って行い、7 月以降の資料の保存に不安が無いよう環境を整え、活用を継続し、未来の世代へ継承していく文化財レスキュー活動を開始しています。
★作業内容
①カビが発生しづらい環境への整備
新渡戸記念館内の過去の温湿度記録から、5 月中旬以降は徐々に湿度が上がり60%を超える時もあり、更に6月に入ると温度も20℃以上となる日が計測されています。そのため、館内清掃、カビ防除剤の設置による予防、調湿剤によるケース内の温湿度調整の他、温湿度計測により適宜除湿機、クーラーを稼働させてきました。しかし、7 月以降電気が止められる場合、除湿機、クーラーの稼働などが難しくなるため、それに備えて更にカビの発生しづらい環境づくりを行います。
②IPM(総合的有害生物管理)活動
近年温暖化のために虫の活動が活発となり、館内でもカツオブシムシなどの発生が見られます。そのため温湿度の調整と館内清掃、資料点検を行い、防虫剤を設置するとともに、適宜殺虫剤、忌避剤を使用して虫害を予防してきました。しかし、上述の通り7月以降温湿度の調整が難しくなることから、虫害が発生しやすい環境になることが予想されるため、予防対策を行います。
★実際の活動の様子
★活動を通じて感じること
代々受け継がれてきた資料には、当時の情報と共に、人の技や心がこめられています。これらのモノは大切に保管してきたからこそ、今私たちが目にすることができます。そして博物館が私設から公へと移る過程においても変わらず、所有者やその関係者、資料の情報の提供者、研究者がていねいに調査研究を継続し、先学の研究を基にさらなる研究を重ね、資料の価値や意義を深め、その成果を市民や全国の人に公開をしてきました。博物館には、調査研究、展示公開、保存活用といった基本的機能がありますが、地域博物館においてはこうした機能の積み重ねが、地域の誇りやアイデンティティの醸成に役立てられ、特色や価値を色濃くし、人づくりや地域づくりの拠点として活かされています。私たちは、このような博物館活動や文化財の価値を多くの市民と共有して、私たちの世代で地域にとって大切なものを失うことのないように、心ある協力者の方々と活動を続けていきたいと思っています。
★収蔵資料からわかること